【コラム】新日本プロレスから事業承継を考える(!?)

夏の風物詩といえば、花火・スイカ・高校野球…と人それぞれ思いつくものは違うと思います。プロレスファンの私にとっては、新日本プロレスが開催する『G1クライマックス』というシングルマッチのリーグ戦が始まると、「夏だな~」という実感が湧いてきます。まあ、そういう人は少ないとは思いますが…。

プロレスに興味のない方は、新日本プロレスといえばいまだにアントニオ猪木のイメージが強いのではないでしょうか? 実は、猪木氏はずいぶん前に新日本プロレスの経営から完全に離れ、現在の社長はハロルド・ジョージ・メイ氏というオランダ人です。この人は日本コカ・コーラの副社長やタカラトミーの社長を歴任したいわゆる「プロ経営者」で、今のプロレス団体は昔のようにトップレスラー=社長、ということでは必ずしもないのですね。

このメイ社長、日本で経営者をやるだけあって日本語ペラペラで、新日本プロレスの公式サイトで『ハロルドの部屋』というコラムも書いています(もちろん日本語で!)。先日、ここに興味深い話が載っていましたのでご紹介します。

外国人社長を迎えた新日本プロレスは、近年海外への発信を強化しています。今年に入ってニューヨークやダラスで興行を行い、8月はロンドンとアメリカ西海岸3都市、9月にはアメリカ東海岸3都市で大会を開催します。これだけ聞くと、一時はK-1などの格闘技に押されて業績が低迷していたのに、ずいぶん人気が回復して結構な話だと思います。しかし、悲しいかなプロレスファンというのはひねくれ者が多く、メイ社長いわくこんな反応があったそうです。

「『9月下旬にアメリカ東海岸3都市で大会開催』と2回公式がツイートしたところ、たくさんリプライがありましたが、ほとんどが『国内を軽視』『海外進出よりもまずやることがあるだろ』といった否定的な内容で、悲しくなりました。」(新日本プロレス公式サイト内『ハロルドの部屋』第55回より抜粋。以下同じ)

そして、海外進出の狙いについて、メイ社長は以下のように繰り返し熱く語ります。

「なぜ海外に行くのか?という点については、(中略)『日本以外の市場でも広がっていかないと新日本プロレスは将来、生き延びていけない』と考えているからです。」

「人口減少が進み経済規模も縮小している日本で『ほぼ国内だけで商売する』という方針では、もはや継続は不可能です。」

「海外での経験値やデータが圧倒的に少ない中で、それでも海外での興行を続けているのは、多少の失敗やトラブルが起こっても委縮せずに、苦い経験を糧にして着実に力をつけていかないと未来がないと考えているからです。」

「時代の変化に柔軟に対応していかないと今のような状態を継続して維持することがいずれできなくなります。」

どうです? この明確なビジョン! さすがは異国で経営再建を成し遂げてきたプロ経営者ですね。でも、メイ社長が言っていることって、みなさんの会社にも当てはまりませんか? 海外進出するかどうかはさておき、「人口減少が進む地元だけで商売していていいのだろうか?」「多少失敗しても、新しいことにチャレンジしなければ未来はないんじゃないか?」と思っている社長さんはたくさんいるのではないでしょうか。

実は、事業承継に取り組むことは、企業が新しいことにチャレンジする上で最適のタイミングです。事業承継と聞くと相続や税金のことが思い浮かぶ人も多いでしょうが、現場で話を聞いていると、先代社長さんの悩みで圧倒的に多いのは事業の将来性に関することです。

自分が築き上げてきたビジネスが時代遅れになりつつあることは分かっている。でも自分は歳で新しいことに挑戦する勇気も気力もない。そうこうしているうちに業績は右肩下がり…。こんな悪循環に陥っている会社のなんと多いことでしょう。

事業承継は、この悪循環を断つ起爆剤になる可能性があります。親族承継にしろ、第三者への承継にしろ、経営者が若返ることで企業には新しいビジョンが生まれます。新しいビジョンは新しいチャレンジにつながり、会社と経営者自身に活力を与えます。このようなポジティブな事業承継は「ベンチャー型事業承継」または「第二創業」と呼ばれ、相続や税金の話とはまったく次元の違う、新しい時代の事業承継テーマになっています。

みなさんの会社も、ベンチャー型事業承継で新日本プロレスばりにV字回復を達成して、レインメーカー(当代一の人気レスラー・オカダ・カズチカのニックネームで、『カネの雨を降らす男』の意)を目指しましょう!